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365日のうち、恐らく300日程はこのBasicsと共に過ごしています。
どんな旅路も、どんな季節も私に寄り添ってくれて、夏は袖をまくって素足にサンダルで軽やかに、冬は中にセーターを着込んだら、コートの下に忍ばせています。この子達と過ごす時間はとても長いです。
今回のコレクションでは、素材をシルクとウールの2種類でご用意しました。それぞれに異なる良さがあります。
絹は人の肌と同じタンパク質、お蚕様が吐いた細い糸たちは肌と同じように呼吸し、吸放湿性・通気性に優れ、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる優しい素材。今回は、微光沢が美しい羽二重の組織に仕上げました。従来のものより黒をより深く表現し、生地には少し張り感をもたせました。私は、飛行機や新幹線での移動時にこの素材を愛用しており、着用によるシワも素材の味わいとして楽しんでいます。経糸にシルク生糸、緯糸に絹紡糸を用いたこの平織の紡緯羽二重の生地は、同じシルクながら異なる糸の特性を組み合わせることで、生糸のエレガントさと絹紡糸のカジュアルさを合わせ持ちます。製織は石川県小松市で、染色は京都・西陣で行っています。なにより絹はもともと天然の抗菌性も兼ね備えてます。ご自身の肌のように優しく育て、長くご愛用いたけたら嬉しいです。
夏のサマーウールも、とても好きな素材です。
暑すぎる夏の日々よりも、寒すぎる冷房の室内の寒暖差が苦手で、そんなとき、ウールは体温を調整してくれる優れた素材です。ウールは人の髪の毛と同じように薄い膜で覆われていて、油分を含んでいるため汚れがつきにくく、吸放湿性・抗菌性にも優れています。控えめで上品な光沢感のある生地は、オーストラリア産メリノ種・梳毛糸 スーパー140’sのとても細い繊維を使用。愛知県一宮市で織り上げた後、同市内にてオゾンを使用した防縮加工を施しています。通常の防縮加工は塩素系の薬剤を使うため風合いが固くなりがちですが、自然界に存在するオゾンを用いることで、原料本来のソフトでぬめりのある風合いを活かした、環境に配慮した技法を採用しました。
夏でも滑らかで心地よい肌触りを実現するため、毛羽立ちは極限まで抑えています。糸染め、織り、整理加工、すべてを日本のウール産地である尾州で行っています。
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Basic Multi-Buttoned Blouse
うなじから抜けるような、なめらかな曲線を描く襟元が着物のように美しく、横から見ても魅力的な一着です。ゆったりとしたシルエットは優しく身体を包みこみながら、腰回りの曲線をなぞるように入ったサイドスリットは、身体に沿うように。タックの入った袖に、きゅっと詰まった袖口、そしてゆるやかなフレアのカフス。お茶やコーヒー、カトラリーを持ったときの所作、その先に伸びる手首が美しく見えるように設計しました。暑さで袖をまくる時、手を洗うとき、ふとした瞬間に意図せず生まれるボリューム。そういった気配を大切にしました。少し鎖骨の見える首元のスリット。装飾のような、小さな石ころのような包みボタン。ボタンは中央にのみ配し、上下に余白を持たせることで、どんなボトムスやインナーともバランスをとりやすいように考えました。
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Basic Sleeveless V-neck Dress
緊張感のある詰襟は、首元に沿う滑らかな曲線を描いて背面に至り、そのままうなじから背中までをフレーミングする涙あきのスリットからは、素肌がちらりと覗きます。脇線は、バストからウエストのくびれにかけて柔らかくカーブし、歩くたび風をはらむ穏やかなシルエットに。手を差し入れられるポケットも、さりげなく。
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Basic Multi-Buttoned Dress
高い位置で切り替えられたウエストに、胸のふくらみに寄り添う細かなギャザー。お腹とお尻を包み込むように入れた立体的なダーツが、静かに輪郭を描き、ウエストは少しゆとりをもたせることで、身体をより立体的に見せてくれます。首元で揺れるタッセルは、きゅっと結んで丹精に、ときには紐を解いて、緩やかに着るのもおすすめ。軽やかに翻る裾、スリットからのぞく脚。手首を華奢に見せる、きゅっと締まった袖口も、このドレスのさりげない魅力のひとつです。
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Basic Trousers
ドレスやスカートばかりでしたが、リラックス感がありながらきちんと見えるこのパンツを作ってからは、こればかり着ています。ゴム仕様のウエストですが、ギャザーは後ろのみ。フロントはすっきりとした太めのベルトに、ラップスタイルのフロントタックを設け、トップスをインしてもバランスが取りやすいように。太ももとヒップまわりには少しゆとりを出しつつ、履いたときにすっきりと見えるフレアストレートのシルエットが、脚をとても美しく見せてくれる1本です。
2021年にこのBasicsというラインを立ち上げてから、少しずつ作り足しながら私のベーシックを育ててきました。今回は新しく4型を作りました。これまでのアイテムも、今でも大切に着ていますが、「今作れる、今着たいもの」を目指して、職人さんやアトリエと相談しながら、再びアップデートするかたちで作ってみました。
一見、今までと何が違うのかわからないくらいの変化もあります。伝わらないくらい、馴染むように育てたつもりです。
皆さんの日常の中に寄り添う1着になれたら、それはこの上ない幸せです。